やかんタワー

!!そびえない!!

動手帳毒彗星

動手帳毒彗星 ~Poisonous green Halley

あらすじとかキャラ設定とかエキストラストーリーとか

 

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■0.あらすじ

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年も明け、冷え込む季節も過ぎ去ろうとしている。

白く染め上げられていた大地はみるみるとあるべき本来の色を取り戻す。

 

この日陰の地にも、再び春の陽気が訪れようとしていた。

 

此処は神明神社。この日陰の地の存在する唯一の神社である。

今はすっかり日が落ちた事で、落ち着いた空間となっているが、

この静けさは日中も一切変わらない。そう、参拝客がまるでいない。

年明けというめでたい日でさえ、人影が疎らに確認できる程度の客しか

来なかったという、ある意味伝説的な神社である。

 

 黒奈「しかもその確認できた客って私やお菓子妖怪、白蛇とか天使に亡霊に

    烏天狗に鬼熊に鴆に・・・あとその他愉快などっかで見知った一部

    人間や妖怪の事だろ?」

 

黒い衣服に身を包む詐欺師の少女、鳴神黒奈は言う。

 

 神巫「あの子達はお賽銭入れてくれたからしっかり『参拝客』なの、

    アンタに至ってはお賽銭入れるどころかかっぱらおうとしたじゃない」

 

この神明神社の巫女、伊沙弥神巫も負けじと言い返す。

 

 黒奈「客である基準が賽銭の有無ってどうなんだよ・・・」

 神巫「何か言った?」

 黒奈「ああ言ったよ、神巫さん超絶マジ天使だって」

 神巫「何なのよそれ・・・」

 黒奈「まあいいさ、くすねた分も含めて、賽銭くらいくれてやるよ、私は

    気前がいいからな」

 神巫「どの口がそれを言うのかしらねって・・・えぇ・・・?」

 

黒奈の手に握られていたのは、神巫が見た事も無いような金の束。

明確な数字にするのは難しいが、1ヶ月は多少無駄遣いしても特に不自由なく

生活できる程の金額はある。

 

 神巫「アンタ・・・これどうしたのよ?」

 黒奈「聞きたい?聞きたいの?」

 神巫「ああ、汚い金なのね、それならいらないわ」

 黒奈「ちょっと待て、まだ何も言ってないぞ」

 神巫「違うのかしら?」

 黒奈「違うかと言うとそうでもない」

 神巫「ダメじゃないのそれじゃあ」

 黒奈「ええいもう、ちゃんと話してやるから少し黙ってくれよ」

 

ここ最近、夜になると、連日のように流星群が降り注ぐようになった。

そんな珍しい光景に人里では毎日お祭り騒ぎ。夜にも関わらず随分と

にぎやかな事になってしまった。

しかしそんな楽天的な出来事とは裏腹に、その流星群に関わる妙な噂が流れ始めたのだ。

 

その噂というのが「流星が運んできた毒で地上が侵食されてしまう」というものだ。

 

だが、所詮は噂話、そのような事実は何処にもありはせず、

誰かが事を大きくするためにばら撒いたでっち上げとしか思われなかった。

 

 

 

しかし流星が降り注ぐ夜が続いたある日、人里に住まう一人の民が、謎の病に侵された。

その民は手足に不自由が生じ、調べてみた所、毒に侵されていたのだという。

 

それが事実証明にもなった影響で、毒の噂は瞬く間に里中に浸透。

それどころか、膨張に膨張を重ね、ついには「世界が滅んでしまう」とまで

言われてしまう大惨事へと成り果てた。

 

ある者はどうせ死ぬならばと人生で一番の贅沢をし、またある者は常識を逸脱した奇行に走る。

そう、二人が話している今この時も、里に赴けば阿鼻叫喚の嵐なのだ。

 

 神巫「で、アンタはその騒ぎに便乗してどうせ毒を防ぐグッズとか

    流星に便乗した商品の類でも売ってたのかしら?」

 黒奈「大当たりだ、世界が滅ぶとなれば、金に紙切れ以下の価値しか見出せないヤツが

    少なからずいるもんでな、小麦粉丸めただけの解毒薬であろうがなんだろうが、

    ちょっとおかしい値を提示しても皆快くお買い上げしてくれるよ」

 神巫「呆れた・・・」

 黒奈「そういう仕事だからな」

 神巫「うーん・・・」

 黒奈「・・・騒ぎの事が気になるご様子で?

    まあお前ならこっちに食いつくとは思ってたけどさ」

 神巫「まさかたった数日でここまで大騒ぎになるなんて思ってもみないもの」

 黒奈「恐ろしいものだねえ、噂の齎す影響力ってものは」

 神巫「毒と言えば、この前にひと悶着あったじゃない?」

 黒奈「醴黄(リーファン)とかいう妖怪鴆だったか、

    そう言うと思って一応こっちで本人に尋、聞き込みをしてみた」

 神巫「どうだったの?」

 黒奈「ダメだな、今回アイツは白だ。

    私の尋、聞き込みで口を割らなかったんだから間違いない」

 神巫「(何したんだろう・・・)」

 黒奈「でもそうなると完璧にわからねえな、他に思い当たる節が無い」

 神巫「・・・異変とか」

 黒奈「ん?」

 神巫「この人里の騒動も、空の流星も、突如現れた風の噂も、

    全部仕組まれた異変だとしたら?」

 黒奈「それは待ちに待った思いもよらない展開だな。して?その言葉の根拠は?」

 神巫「勘よ」

 黒奈「実にお前らしいな、だが、あながち間違いじゃないっぽいぜ?神巫」

 

黒奈が見上げる遥かの空、遮る雲は時と共に払われ、

その空には連日降り注いでいた流星の姿は見当たらない。

だが・・・

 

 神巫「何あれ・・・」

 黒奈「これはマジにおもしろい事になってきたな」

 

 

淡い光を放ちながら空を覆い尽くす碧色の巨星が二人の前に姿を現す。

 

その光に心を奪われたかのように、二人は闇夜へと飛び出した。

 

 

 

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■1.キャラ設定

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◇プレイヤーキャラサイド

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 ○伊沙弥の巫女

  

  伊沙弥 神巫(いざなみ いちこ)

  Izanami Itiko

 

  種族:人間

  能力:霊力を操る程度の能力

 

  神明神社の現状に危機感を覚え続ける巫女さん。

  信仰は相変わらずだけど今回賽銭はそれとなくある巫女さん。

 

  真面目で、他の人物と比べても圧倒的に常識人。

  悪い事は悪いと割り切り、黒奈の蛮行に呆れ返っている。

  噂には流されないタイプ。

 

  黒奈から聞いた毒騒動から、異変の臭いを嗅ぎ付け、捜索に向かう。

 

  今回も、その鋭い勘は冴えている。冴えすぎ。

 

 

 ○豪雷の詐欺師

 

  鳴神 黒奈(なるかみ くろな)

  Narukami Kurona

 

  種族:人間

  能力:電気を操る程度の能力

 

  騒ぎに便乗して見事に儲けた、頭のキレる性悪詐欺師。

  相変わらずの情報網と世渡り術で、神巫をサポートする。

 

  好奇心旺盛で、何に対してでもすぐ首を突っ込みたがる性格。

  面白い事が第一。あとシーチキンは正義。

  噂は流すタイプ。

 

  儲けたついでに、里の現状を神巫に報告すれば、きっとおもしろい事に

  なるに違いない。謎の確信を持って神社を訪れた彼女だが

 

  見事に彼女が好きそうな現状になっている。こっちも冴えてる。

 

 

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◇敵キャラサイド

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 ○一面ボス 健全な電波少女

 

  伊藤 差寺(いとう さてら)

  Itou Satera

 

  種族:天人

  能力:星と交信する程度の能力

 

  とある事情により、地上に降りている天人。

 

  星々と交信する能力とは星が蓄える情報を微弱な電磁波として送受信する事で

  惑星外に至る大規模な情報を仕入れる能力である。

 

  彼女の主とも呼べる存在が、趣味のひとつくらいは持った方が良いと言う為に

  最近では外の世界で人間が打ち上げた星の電波を拾うのが趣味らしい。

  そのためか、外についてのある程度の事に詳しい。

 

 

  電波受信によって何か大切な情報を得た差寺。

  彼女が「お嬢」と呼ぶその者に、その情報を伝えねばならないのだが

  その者の姿が見当たらない。

  代わりにとある人間二人に遭遇してしまう差寺。これは運が悪いですね。

 

 

 ○二面ボス 染み渡る魅惑の甘美

 

  狩暮 千代子(がるぼ ちよこ)

  Garubo Tiyoko

 

  種族:妖怪

  能力:染み込む程度の能力

 

  一基満足を探して放浪するお菓子妖怪。

  中身がざっくりしたチョコ菓子を常備している。

 

  お菓子妖怪と呼ばれている者達は、種族としては特に定まっておらず。

  ひとつのお菓子を好物とする妖怪を総じて「お菓子妖怪」と呼ぶ。

  お菓子妖怪として分類される妖怪はその大多数が温厚であり、

  人間に対しての害も少ないために人里などでもその姿を確認できる。

  害が<少ない>だけであり、<無い>訳ではないのでそこは注意せねばならない。

 

  体を軟化させて物体の中に染み込み、簡単なものなら操作できてしまう。

  お菓子妖怪を集めてお茶会を開くのが趣味で、今回はその準備中。

  一基満足を探しているのだが、見つからないらしい。

 

  人間たちに満足の居所を聞くものの、無論人間たちはそんな事しらない。

  しかし彼女にとって、人間の言い分も知った事ではなかったのだ。

  聞いてきておきながらのあまりに理不尽な仕打ちに、人間たちは困惑するしかなかった。

 

 

 ○三面ボス 周る粗大衛星

 

  出降 宇宙(でふり そら)

  Dehuri Sora

 

  種族:天人

  能力:使い物にならなくする程度の能力

 

  妖怪の山の麓で待ち構える天人。

 

  差寺の報告は既に耳に入っているようで、

  「お譲」に合わせるべき人間を見極めるために待ち構える。

  人間の事を多少見下しており、人間に対しては余計な一言を挟む事が多い。

 

  彼女の能力は、道具を使用不能状態にしてしまう破壊能力。

  外部的、内部的な要因において「使えない状態」にしてしまう。

  この能力によって破壊されたものは、彼女の周囲に浮遊させる事ができる。 

 

  彼女も「お譲」に、何か打ち込めるような事を見つけるように言われており。

  外の世界で遊ばれなくなった芸夢を趣味とするのだが

  如何せん能力が暴発してよく使えなくなってしまう。

  むしろ、天人は人間よりも頑丈かつ力が強いため、

  ちょっと白熱してしまえば人間の作ったものは能力関係なく簡単に壊せてしまう。

 

 

 ○四面ボスA 山のエンターテイナー

 

  音音 音音(おとなり ねおん)

  Otonari Neon

 

  種族:烏天狗

  能力:あらゆる音を発音する程度の能力

 

  基本山にはおらず、人里に降りて大道芸を披露している烏天狗。

  自由に生きる事を望み、束縛を嫌う。

  新聞は書かない。

 

  天狗の持つ社会性を嫌い、組織行動せずに社会からはみ出している天狗。

  大道芸で用いるのは自分の「声」であり、能力によって

  普段声では表現できない音も簡単に発音してしまう。

  

  山を駆け抜ける「風の便り」によって、人間達の侵入を知り、一目散に駆けつけた。

  社会に背く彼女には、人間達を追い返す気は更々無いらしい。

  その代わり、人里が大騒ぎで大道芸どころではなく、いつに無く暇であるため

  弾幕勝負を持ちかけてくる。

  遊んだら天狗達に見つからずに山を登るルートを案内してくれるらしいので

  お言葉に甘えた方がいいかもしれない。

 

 

 ○四面ボスB 神速の白狼天狗

 

  回回 回(えかい まわる)

  Ekai Mawaru

 

  種族:白狼天狗

  能力:千里先まで走れる程度の能力

 

  天狗の社会に従順な白狼天狗。

  だが少し野心家じみた思考を持ち、のし上がるつもりでいるらしい。

 

  誰にも追いつけない程に地上を高速で駆け回り

  「風の便り」として、自身の得た情報を各地にばら撒く情報網の働きをしている。

  特に何もない時は、将棋を打っているか、そこら中を走り回っている事が多い。

  

  人間の侵入を察知した彼女は、情報を各地にばら撒いた後、すぐに人間達に対峙した、

  彼女は鼻が利くため、人間の臭いを覚えてしまえば容易く追う事ができるのである。

  しかし勝てる相手だと見くびると、痛い目見るのはどちらだろうか。

 

 

 ○五面ボス 高き目指す花火娘

 

  敦出池 叶多(とんでいけ かなた)

  Tondeike Kanata

  

  種族:天人

  能力:天まで届く程度の能力

 

  先の二人が「お譲」と呼ぶ、暇を嫌い、退屈を覚えてしまった花火を愛する天人。

  他の天人を比べると、その熱血ぶりは異質とも取れる。

 

  しかしその天人としては異質な言動の数々が周囲に様々な影響を与えている。

  

  差寺の通達により、今回の騒動の発端を知った叶多。

  異変の黒幕を止めるため、天に向かおうとする彼女の下に二人の人間が現れる。

  止めに行く事に迷いがある事を人間に見透かされ、

  弾幕勝負に勝った方が止めに行くという提案を持ちかけられた叶多は

  その勝負に応じる事にした。

 

 

  そもそも天人は、楽天的な生活が日常であり、その大体は簡単に言うと

  桃喰って踊って寝るといったものである。

 

  彼女は過去より、何も与えられず。

  そして何かを与えられても、それをすぐに奪われながら生きてきた。

  やがて、そんな変化の無い日常に飽きが生じてしまい、彼女は退屈を覚えてしまったのだ。

  何か目新しいもの、面白いもの、何でもいい、彼女は自分が退屈しないための

  何かしらの要素を欲しがった。

 

  その感情が爆発した彼女は、とうとう奪う者達の下を離れ、一人となった。

 

  一人となり、そして自由となった彼女。

  もう何かを奪われる事もない。逆に与えられる事もないが、それは自分で見つける事ができる。

  しかし天界では、彼女の退屈を解消するための要素は見つからなかった。

  悩みに悩みぬいた末、答えの見出せなかった彼女は

  天界よりも更に上の有頂天に住まう神に相談を持ちかける。

 

  事を説明し、それを聞いた神は答えた。

 

  「望むならば天界より下、地上に赴きなさい。其処には天界には存在しないものが無数とある。

   ただし、それが貴女に影響を与えるに価する代物かは、私には分かりかねます」

 

  神の言葉を受け取った彼女は、何ひとつ迷う事なく地上に降りる。

  時は日没。

  日が落ち闇が世界を支配する時間帯であるにも関わらず、彼女が降りた其処はとても明るく

  人々が無数に蔓延り、随分と賑やかだった。祭りが行われていたのだ。

 

  彼女は目を輝かせた、天界でもお祭り騒ぎのひとつや二つは見た事がある。

  だが、彼女の目の前に広がる光景は、

  ただ歌って踊ってする天界のソレを遥かに凌駕するものだった。

  何も得る事のない生活を送ってきた彼女によっては、その目に映る全てが宝石箱だった。

  

  すっかり地上の祭りの虜となってしまった彼女は、ただ只管に、一心不乱に堪能した。

  天人の持つ人間より優れた感覚を使い、景品を総舐めにしたり。

  屋台の食べ物を食べ歩いたりと純粋な子のようにはしゃぎ回った。

  彼女の感じていた退屈は、既に何処かに消えているも同然だった。

  しかし、この退屈しのぎは一時のもの、明日も祭りが行われているかと言うと

  そういうワケにも行かない。其処も天界とは違うのだ。

  浮かれていた彼女だったが、その事実がふと頭に過ぎった事で、

  彼女の顔は次第に失楽の表情へと変わって行った。

 

  そんな思いに耽る彼女だったが、周囲が突如として静かになった事に気が付く。

  もう祭りもお開きなのか、それとも何か始まるのか、

  状況が読み込めない彼女の目に飛び込んできた光景。

 

 

  高く、何かが通り抜けるような音が鳴り渡り、次の瞬間。

 

  上空に轟音を上げて色とりどりの閃光が広がる。花火が上がったのだ。

  止め処無く打ちあがる花火に、彼女の視線は釘付けになり、失楽の表情も自然に消えていた。

  

  そして間を置いて打ちあがった一発の花火。

  それは今まで打ちあがった花火よりも一層大きな音を立て、

  そしてより一層大きく閃光を広げる。

 

 

  彼女はその光景に、完全に心奪われた。

 

 

 ○六面中ボス 放浪の警告人形

 

  赤光 羽虎(あかみつ ぱとら)

  Akamitu Patora

 

  種族:人形

  能力:警告する程度の能力

 

  何処にでも現れる、自立意識を持った謎の傀儡人形。

  あらゆる危険に対しての警告をするためだけに現れ

  あまりに危険度が高い場合は実力で止めに来る。

 

  警告中は堅苦しく形式的な口調で話すが

  彼女の中で「警告は使命」という信条から来る形式感であり、素ではない。

  本来の彼女は普通に気さくである、人形である事を忘れるくらいに。

  基本的に脱力しており、行動の際も実際の傀儡のように糸に吊るされた感じで動く。

 

  叶多の能力により宇宙を飛行する人間達に、毒の充満するエリアだという事と

  その先に毒の発生源が存在する事を警告するために現れる。

  警告を使命とするために、彼女は人間を追い返そうとするが、

  人間達にとっては黒幕の存在を教えてくれた邪魔者でしかなかった。

 

 

 ○六面ボス 嗚呼有難き箒星

 

  針翠 霊羽(はりすい れいは)

  Harisui Reiha

 

  種族:天人

  能力:障害を排除する程度の能力

 

  

  ハリーテイル 尊き尾を引く流翠星

  Harry tail

 

  能力:軌跡に毒を撒く程度の能力

 

  今回の異変の黒幕である天人。

  ひとつの事に一心に取り組む叶多を羨んでいる。

  

  自身に出来る事がわからず、有頂天の神に相談し

  異変を発生させる事を持ちかけられる。

  その結果、叶多と、有頂天の神による後押しによって今回の騒動を引き起こした。

  地上から見えた翠色の巨星の正体は、全て彼女が周囲に散布した毒である。

 

  あと、地上の民に抑制が無くなったのも、半分近くは彼女の仕業である。

  もう半分は人間達の自我である。

 

  落ち着いた性格なのだが、一度やろうとした事はやり遂げる行動派。

  騒動を引き起こすに行き着いたのは、そんな彼女の性格が故なのも否めない。

 

 

  彼女の持つ箒、「ハリーテイル」は彗星の力を蓄えたそれとなくありがたい箒。

  尾の部分の通った軌跡に毒を散布する能力がある。

  毒性や濃度などは、箒の所持者が大まかに決める事が出来、極端な話が

  妖怪にさえ効く即死性を持つ毒さえ容易く作る事ができる。

  無論、毒を散布しないようにも出来る。

  また、跨ったり上に乗ったりする事で飛行補助に使用したりもする。

  別になくても飛べるが、箒で飛行した際にも軌跡に毒を撒ける。

 

  

  宇宙に髑翠星(どくすいせい)を生み出し、

  そこから地上に向けて毒を送り込んでいた異変の原因。

  彼女の下に現れるは、叶多を退け、叶多の力で宇宙に乗り込み異変を止めに来た人間達。

 

  彼女は人間達に言う。

 

  「私にも出来る事、見つけたのよ。だから、邪魔なんてさせない」

 

  

  叶多と彼女は、友人である。

  叶多は彼女の行動の根源が自分にある事を、異変の原因が彼女だと知った時に悟った。

  友人として、その暴挙を止めるべきか

  友人として、彼女の意思を尊重するべきなのか

 

  友の起こした暴挙は止めるべきだと自身に言い聞かせるものの、

  奪われる辛さを知る叶多は奪う事を躊躇する。

 

  迷いに溺れる彼女の下に、あの人間達はやってきた。

 

 

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■2.エキストラストーリー

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異変が解決し、毒の脅威が消え去った日陰の地。

人々の暴れた爪あと以外は、何ら変わらない日常が再び訪れた。

 

そんなある日の神明神社

神巫と黒奈、それと叶多率いる天人ご一行、それに毒異変の話を聞きつけ、

醴黄も交えて会話していた。

 

 

 神巫「そんな事で迷ってたの?」

 叶多「そんな事、と言われてもなあ・・・」

 神巫「自分がやられて嫌な事を誰かにするな、なんて誰かが言ったけど

    悪い事だとわかってるなら絶対に止めてあげないと、

    もしどうしようもない馬鹿が相手だったら絶対付け上がるわよ?」

 叶多「そんなものなんだろうかなあ」

 黒奈「おいまて、どうしようもない馬鹿って何のことだ」

 

其処にいる全員が黒奈の方を見る。

 

 霊羽「私達の事じゃないかしら?」

 黒奈「認めるのかよ!しかもさらりと私も含まないでくれ!!」

 醴黄「しかし、この箒は実に興味深いな、自在に毒を生み出せるとは

    まあそれのせいでとんでもない濡れ衣着せられたがな!」

 黒奈「何か言ったか?」

 醴黄「ごめんなさいなんでもないですホントマジに」

 

思わず縮こまる醴黄。

本当に黒奈は彼女に何をしたのだろうか。

 

 神巫「誰にでも使えるんでしょそれ、随分物騒な代物ねぇ」

 醴黄「ヘタに扱うと自分の生み出した毒でイチコロだろうけどね」

 霊羽「貴女方は毒は平気だったの?髑翠星のド真ん中にいましたけど」

 神巫「特には」

 黒奈「丸めた小麦粉飲んだからな」

 霊羽「うん?」

 

霊羽が地上に振りまいた毒は、手足が若干痺れる程度の超薄濃度の神経毒。

侵されたとしてもすぐに効果は薄れ、決して大事に至るような毒ではないため、

これといって危険という程のものでもなかった。

噂を爆発的に広める引き金となった、毒に侵された人里の民も、

今ではピンピンしている。

 

 

そして次第に異変の話に切り替わる。

 

 宇宙「ハッキリ言って、

   人間がここまでできるとは思ってもいなかったぞ

   今回はお嬢や霊羽を救った事に免じて感謝してやる」

 神巫「伊達に異変解決やってないからね、人間舐めすぎよ貴女は」

 黒奈「そういえば、この異変を起こした意図が読めないな

   なんだ?地上侵略でもしたかったのか?」

 霊羽「何でしょうね、たぶん、羨ましかったのかもしれない。

   直向きに、何かに取り組む叶多が、私は羨ましかったのよ」

 叶多「・・・・・」

 霊羽「だから私は、彼女みたいに何かがしたかった。

   でも、何をすればいいか、私にはわからなかったの。

   だから私は、あの方に相談を持ちかけた。

   私よりも上、有頂天に住まう傍観の神に」

 叶多「・・・・・!」

 宇宙「・・・・・」

 差寺「・・・・・」

 黒奈「地上人からしたら迷惑な話だな」

 神巫「傍観の神?」

 

 ???「そうか!アイツの仕業だったのか!!」

 

神巫が険しい顔をする。

それと同時に、神社から響く声に、

その場にいる全員がその声の方向へと目をやる。

其処には、異様なまでの、神としての風格を持つ二柱の姿があった。

 

神明神社に祀られている太陽神、天照と

日陰の地創造主の一柱、蛍沢 雨龍である。

 

 黒奈「これはこれは神様達がお揃いで」

 神巫「というか、珍しいわね、アンタが起きてるなんて」

 天照「聞いた名が耳に入ったものだから飛び起きちまったよ」

 雨龍「若造めが、このような小娘を利用して何を考えておるのだ」

 神巫「知り合いなの?」

 天照「互いに日陰の地に住まう神として、一応はね」

 雨龍「神としては随分と幼いがな」

 

一瞬考える素振りを見せた後、天照は口を開く。

 

 天照「針翠霊羽と言ったか、君は傍観神に言われて異変を引き起こしたのかい」

 霊羽「え、あ、はい、そうです」

 雨龍「・・・奴の意図・・・考える程にわからないな」

 天照「んじゃあさ、この際だし、異変を解決した人間さんに直接確かみてもらおうか!」

 黒奈「おいちょっとまて、話が突拍子もなさ過ぎるぞ」

 雨龍「そこの天人は確か、あらゆる対象を天まで届ける力があるそうだな」

 叶多「確かにそうですが、どうして私達の事をそこまで?」

 

思わず敬語になる叶多。

 

 天照「神様ナメたらいけんよ?」

 醴黄「すごい事になってて話が読めんよ」

 差寺「おっ、同じくだよ」

 雨龍「そういう訳だお二方よ、天人の力で有頂天まで飛び、

    傍観の神に会いその真意を確かめて来い、

    あと特に理由が無くても痛い目に合わせてつれて来い」

 神巫「うーん・・・まあわかったわ」

 黒奈「了承しちゃうのなお前」

 神巫「乗りかかった船だしね、最後まで乗っかってやろうじゃないの」

 黒奈「はぁ、まあいいか、わりかし面白そうだしな、有頂天」

 叶多「ではいきますよ!!」

 

かくして有頂天に向けて飛ぶ二人、まだ見ぬ天空の世界に、彼女達は何を見るのか。

それにしてもすごい速度だ、Gで体が潰れたりしないのだろうか。

 

 

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◇敵キャラサイド

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 ○エキストラ中ボス 何故か居る警告人形

 

  赤光 羽虎(あかみつ ぱとら)

  Akamitu Patora

 

  種族:人形

  能力:警告する程度の能力

 

  未曾有の危険を察知し、一体どうやったのかわからないが

  人間と同じ速度で並行する本当に謎な警告人形。

 

  どうやら霊羽の時とは比べ物にならない程の危険指定領域らしく。

  追い返す為に放つ弾幕も、以前の比ではなくなっている。

 

  勝手に駆り出されたようなものなのに勝手に追い返されたらたまったものではない。

 

 

 ○エキストラボス 遥か見据える付喪の御神

  秋桜 慧星(あきざくら えぼし)

  Akizakura Ebosi

 

  種族:神様(付喪神

  能力:観測する程度の能力

 

  傍観神として多くの天人に慕われる、有頂天(色究竟天)にその身を置く神。

  遥かの地から世界を観て楽しんでいる。

  

  針翠霊羽から相談を受け、

  毒を少しずつ充満させる事で異変を起こすように仕向けた。

  

  彼女の正体は、過去に彗星が星に接近した際に宇宙に打ち上げられた人工探査機の付喪神

  人々に与えた功績によって、成ったばかりの頃より強大な力を持つ。

 

  観る事に関してはかなり長けており、

  有頂天より下を見下ろす事だけで世界の全てを見る事ができる。

  また、一度に複数の他者の眼を借りる事で、その者達が見ている景色を同時に彼女にも共有できる。

 

  人の為に作られ、人の力になり続け、やがて役目を終えた彼女。

  長い年月、宇宙を漂流していたが、やがて付喪神として意識が宿る。

  それもただの付喪神ではなく、まさに「神」の名が示す通りの強大な力を経てである。

 

  彼女は物でしかなかった、物として生まれたからには当然、人に必要とされなくなり、

  役目を終えてしまえば不要となる。

  人にとって不要となった彼女は、今度は自身が望むように「生きる事」を許されたのだ。

 

  そんな彼女がやりたかった事。

  長きに渡り彗星を眺め続けて来た彼女がやりたかった事は、人を眺め続ける事である。

  彼女は自身を捨てたも同然である人間が好きで、とにかく人を眺め続けた。

  彼女の好奇心がまるで尽きる事を見せない程に、

  彼女にとって人のとる行動とはそれほどに興味深いものだったのだ。

 

 

  そうして、観る事の素晴らしさを覚えた幾年後の彼女の元にとある天人が訪れる。

  後の花火天人、敦出池 叶多だった。

  やるべき事の見つからないという叶多に、彼女は自身が見知った地上へと赴く事を助言した。

  後に地上の見入られた叶多の事を知った時、彼女はご満悦だったという。

 

  そして更に時は流れ、

  彗星の事など記憶の片隅に消えかけていた彼女の元に、更なる天人が訪れた。

  それが針翠 霊羽だった。

  毒を放つ箒と、彼女の抑制を食い潰す能力に、彼女は思い出したのだ

  かの彗星を眺めていた時期と彗星の齎す世界の滅亡に踊らされる人々の姿を。

 

  すでに数年の時が経ち、人々も進化したと踏んだ彼女は見たくなってしまったのだ。

  あの時と同じ環境に放り込まれた人々が、果たしてどのような行動に出るのかを。

 

  しかし、彼女が見た光景は、人々は滅亡に怯え、抑制の無くなった人々が暴れまわる。

  これでは過去と同じである。

 

  しかし、同じなどではなかった。

 

  彼女の前には、今まさに、神にケンカを吹っかけてきた人間が二人もいるのだ。

  神に祈る者達がいても、神にケンカを売ってきた人間が、果たして存在したか?

  否、それは無い。そもそもできないのだ。当然前例は無い。

 

  有頂天、その名を色究竟天。

  傍観神と呼ばれる神の展望台で、人間と神が対峙する。

 

  此処までたどり着く事の出来る人類の進化を、力を、

  その眼に焼き付けられた彼女は云った。

  

  「貴女方の力、見るだけではあまりに惜しい!全力で!私に示して下さい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ――やがて。

  一応正当な理由に則って戦い

  勝利を収めた神巫と黒奈は、慧星を地上に引きずり降ろし

  慧星は地上の二柱に手痛いお叱りを受けた。

 

  おそらくこれで、今後慧星の好奇心が行き過ぎる事は無いだろう。きっと。

 

 

  その日の夜、神社で季節外れの大きな花火が上げられたそうだ。

  天高くまで届くその花火は、多くの人々を魅了したと言う。

 

  しかしそれで神社に赴く人が増えたかというと。うん。まあ。そうだね。